2024/01/30 07:08

ダイヤモンドは2000年近く前から貴石として知られていますが、カットを試みるようになったのは14世紀に入ってからの事です。
それ以前は、インドで行われていた「カボションカット」(石の底面は平らで上部をドーム型に磨く加工)が最初の宝石加工でした。
そしておよそ1400年頃に「テーブルカット」が登場したと言われています。(下図左)
石の表面がテーブルの様に平らにカットされ、上から見ると四角形に見えるこのカット。
現在使われている「ラウンドブリリアントカット」や「エメラルドカット」など、上部に平らな面(テーブル)を持つカットの原型となりました。

「テーブルカット」は徐々に改良され、16世紀半ばまでに多面体になっていきます。
18ファセット(研磨面)となった「オールドシングルカット」を経て、1650年にマザラン枢機卿の主導で、34ファセットに再改良されました。
「ガードル」と呼ばれる、石の外周も研磨されたこのカットは、その名を取って「マザランカット」と呼ばれました。(下図右)
 Baum社サイト引用

一方で、15~16世紀にかけては「ローズカット」も多く用いられました。(下のイラスト左下参照)

底面が平らな事が特徴的で、ドーム型の頂上から放射状に、20面前後の三角形のファセットが配されます(現在では24面)。

開花直前の大きく膨らんだバラのつぼみを思い起こさせる形から、この名前がついたそうです。

ÔNISI社サイト引用


17世紀後半~19世紀末にかけては「オールドマインカット」が主流となりました。(下図左)

現在のラウンドブリリアントカットと同じ58ファセットですが、形は異なります。

外周は角が丸くなった四角形で、ラウンドブリリアントカットよりも背が高く作られています。

このカットから部分的にインスピレーションを得て生まれたのが、「クッションカット」だそうです。

ÔNISI社サイト引用


その後19世紀後半から用いられたのが「オールドヨーロピアンカット」です。(上図真中)

起源はオールドマインカットと同じ17世紀末らしいのですが、あまり一般的ではありませんでした。

外周は丸くなり、58のファセットをもつ、現在のラウンドブリリアントカット(上図右)の先駆けとなった形です。


1874年に切削工程が機械化されるまで、カットは職人の手作業で行われていました。

きれいな対称とはならないファセット面が、宝石に柔らかな輝きを与えていました。

今とは違い、ろうそくの火に照らされて美しく見えるよう、考えて作られていたという事です。


カットが機械化されて以降、職人たちは様々に軌跡を美しく見せる工夫を試み、多くのカットが生み出されました。

それを「トランジショナルブリリアント(現在のブリリアントカットへのつなぎのカット)」と呼ばれるそうです。

また、現在のラウンドブリリアントカットは、1919年に数学者・宝石職人のトルコフスキーにより発表された「ダイヤモンドの理想のプロポーション」が、ベースとなっています。


*上の説明で出てきた「カボションカット」と「クッションカット」については、次の「宝石のカットの歴史について②」で、イラストをお見せする予定です。


情報ソース:

https://4cs.gia.edu/en-us/blog/old-mine-cut-diamond/